僕らは何だかすぐに忘れちゃう。

みんなが綺麗な写真を撮れるようになった。

それぞれが撮った写真は、少しの孤独が積もった後に、共有される。

生活にへばりつく孤独が再び顔を出してくることに気付かないでやり過ごすために。

 

そうした孤独からの逃避行を見て、あぁ楽しかったな。と思うことは少ない。

それは、みんなと一緒にいる時も、孤独がへばりついたままだったからかもしれない。

 

しかし、今回の旅行は、じんわりと自分の中で楽しかったな。名残惜しいな。と湧き出てきた。

この気持ちは、日常の慌ただしさで希釈され、まるで無かったかのように、すぐ過ぎ去っていくだろう。

そうだとしても何とか肌触りを残しておきたいとこの文章をしたためている。

 

ホテルの部屋に着くと、ダブルとシングルのベッドがひとつづつ置かれていることで生じた、3人の男による熱い闘い。

そこから始まり、早朝5時まで、陣取りゲームをして、翌朝昼に起きたこと。

 

そして、眠い目を開けた時に感じた、薄暗い部屋に漂う前夜の楽しさの残香を忘れたくないと思っている。

 

美味しい食事も気持ちの良いマッサージも、再現することは出来る。きっとお金があれば。

そういう再現可能性がいつでも満ちているものでは決してない存在は、すぐには思い出せない。

思い出せないものは欲求出来ない。

 

僕らはなんだかすぐに忘れちゃうのだ。

ただ、思い出せる引っかかりのようなものを残しておきたい。